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少林拳と少林寺拳法の違い (再編集版)

日本では同一視されがちな少林拳少林寺拳法
名前はそっくりですが、中身は全くの別物です。
最終更新 2015/10/12

①歴史
 

少林拳は中国武術の泰斗・嵩山少林寺の武術と言われています。
簡単に中国拳法って言っても少林拳、武当拳、蔡李佛拳、八極拳、洪家拳、酔拳、蟷螂拳、太極拳...など多様な流派が存在します。
その中でも歴史もある正統派と言われるのが少林派!
歴史は1000年以上にも渡ります。
全部で七十二式あって極めるのには何十年かかるそうです(全て修めるのは不可能?)。
通常はその中の数種を選択して修行するそうです。
達磨禅師が伝承したのが起こりと言われていますが、禅師の修行先が天竺説だったり崑崙山脈説だったり統一されておらず、禅師の存在を疑う説もあります。
私見ですが、中国武術の一派にはある拠点の周囲一帯で同じ血脈・地脈の集団が住んでいて、自警団的な武術がそのまま一門を構えるに発展したケースが実在するようです。
つまり、少林拳も少林寺を取り巻く農民や禅僧たちが、外敵から家族や財産を守るために編み出した拳がそのまま少林派に昇華したなのかもしれないな、と。
 
嵩山少林寺と福建少林寺が有名であるが、後者はもう残っていません。
聞いたところ、少林寺自体が文化大革命での弾圧対象となり、映画「少林寺」が放映されるまでは今のような脚光を浴びることはなかったそうです。

 
 
少林寺拳法は戦後に荒廃した日本の若者を導くために宗道臣氏という一人の男が立てた拳法。

つまり、日本で生まれて、歴史がまだ浅い拳法です。
少林寺の名前は嵩山少林寺の名前にあやかって付けたそうです。
創設者は中国拳法やその他武芸を自分なりに融合して今の形にしており、創設当時、魅力的な拳法と言われ、他流派からの有名武術家も多くが学びに来たそうです。
 
現在では世界各国、数百万の拳士を抱える規模になっています。
また日本九大武道の一つに数えられています。
他の八武道に比べて、歴史が浅くとも、同格に位置できるこの武道の有用性・有効性は推して知るべしと言わざるを得ないでしょう。
<柔道、剣道、弓道、相撲道、空手道、合気道、少林寺拳法、長刀(なぎなた)道、銃剣道>


 
 
 
②理念
 

少林拳は「如何に敵の急所に先手を打つか」という合理的な考えで磨かれた武術。
それにともなって心身を鍛え、気功や活法殺法を交えていく感じ。
おそらく中国は昔から盗賊の被害や戦争が絶えない歴史であったから、そういった敵からいかに身を守るかという精神が武術の根底に位置するのではないでしょうか。
つまり生死をかけて技を極める。
だからDISCOVERYでやってた少林拳特集であんな神業が披露できるんだな。。。
 

少林寺拳法は日本の若者に健全な肉体と精神を育ませるために発展させる目的だったらしく、「相手を倒す」というよりは「自分の身を護りながら相手を制す」要素が強い。
拳禅一如など、肉体と精神両面を鍛える考えが強い。
人間を育てるという意味で教養を身につけ、心を豊かにする宗教団体でもある。
護身術としての意味合いが強く、日本人の争いを好まない文化にも上手く適応し、今では世界的にも大きな組織となっている。
「力無き正義は無力なり 正義無き力は暴力なり」とは宗道臣氏の理念で、武力というのものの核心をついています。

 
 
 
③これから習うことを考える方へ
 
少林拳
を考えている方、東洋武術の中では特殊な部類に入ると思います。
禅の要素を取り入れて、精神修養を。。。というのは普通ですが、この武術は相当実践的(むしろ実戦的)に作られています。
攻撃のカウンターでまず目潰し、追撃には足を踏んで逃がさない、股間を蹴り上げてそのまま顔面蹴りetc...
古流武術の一つであって、現代武道とは一線を画すものだということでしょうか。
また、現在日本に伝わる古武道とも指導が大きく異なっていると感じました。
突き詰めていくと人体破壊に特化した殺人術に成り得ます。
もちろん、活人拳の要素もありますが、上記の理念が根底にあることをお忘れなく。
体験談は「おすすめの武道、武術、格闘技」をご参照ください。 
 
 
少林寺拳法を考えている方、精神修養を図るにはとても良い武道だと思います。
護身術として、蹴りや突きを交えた剛法、関節技や掴まれた時の返し技を含めた柔法を習得することが出来ます。
女性が気負いせずに修められ、月謝もお安い、日本全国練習場所が多い、というお手軽感があります。
但し、四段(正拳士)以上は香川県の総本部でないと昇段試験が受けられません。 
 
さて、少林寺拳法は弱い、とよく言われます。
私見ですが、それは練習方法が相手を倒すことを前提に行われておらず、理念が身を護ることを前提にしているからであって、この武道自体が弱いわけではないと思います。
また、この武道を習っている人の故障率の少なさ、身体の柔軟性、心身壮健、お歳を召してからも続けられることを考えると、一生続けられる武道ではないかと思います。
それこそが東洋武術の真髄ではないでしょうか。
追記すると、現在の少林寺拳法の黒帯授与は他の武道に比べて非常に敷居が低いです。
極真空手が試合の成績等、柔道が試験で一定数の勝利、といった、実戦を重んじているのに対して、少林寺拳法は悪い言い方をすれば、習い続ければ誰でもいずれは黒帯になれます。
それは現在の指導部の考えなのかもしれませんが、それが喧嘩に弱い黒帯を輩出している原因なのかもしれません。
さらに、本当に効く柔法(関節技)ができていないまま昇級してしまうこともあります。
しかし、本来の技を修められている人と対峙すると、いかに奥深い武道かはすぐに分かります。
すぐに喧嘩で強くなりたい、という気持ちの人には合わないかもしれませんが、武道を通して自分の軸を作りたい、というしっかりした気持ちがあれば、この武道はやり甲斐のあるものになるはずです。
そんなあなたが本来の技を修めているよい指導者にあえることを願います。

 
  
 


④東洋武術と西洋武術の違いについて(おまけ)
 
実際に少林寺拳法を修めている人と、総合格闘技を練習している人では体格が違います。
それは力なきものが力あるものを制するための技術を修める武道か、相手を戦闘不能状態に追い込むため力をつける格闘技かの違いであり、そのために使う筋肉が違うからです。
 
剣道の中に、「一眼二足三胆四力(いちがんにそくさんたんしりき)」という言葉があります。
一眼とは相手の力量・思考を見抜く洞察力
二足とは自分を支え、技を繰り出す根幹となり、間合いをつめる足腰
三胆とは強きを挫き弱きを助ける、困難に、強者に立ち向かう胆力
四力とは筋肉を用いて繰り出す力
一に近いほど重要であるが身につきにくい。
体格に劣っていてもそれより重要なものが存在します。
 
また、試合をする際のセコンドのアドバイスにも大きな違いがあります。
東洋系に多いのは「自分の普段の力を出し切ってきなさい」
西洋系に多いのは「相手を殺してこい」
後者が野蛮であると言いたいのではなく、武道と格闘技が掲げる思想の違いが如実に表れているということです。

筋骨隆々で早く結果を出すには西洋武術、心身壮健に長く続けるなら東洋武術、というのが私の印象です。
練習法の違いについて、ジムと道場の違いで簡単に説明致します。

 

⑤武道の思想(おまけのおまけ)
武道を修めると内面から磨かれる、というのが私見です。
静を基本とした構え、その体勢を維持する筋肉(今風に言うとインナーマッスル)、正座や座り方といった日本伝統の動きは武道の基本です。
茶道や華道を修めた女性の動きや言動に落ち着きが見られるのをご存知の方も多いかと。
私は色々な武術に触れる機会がありましたが、これは武道と呼ばれる部類に顕著にみられるものでした。
武道の道とはこういった人生を歩むための道、人を育てるための道なのではないでしょうか。
また、「武」という文字は「矛を止める」と言う意味を持っています(本来は歩兵が武具を持って行進する意)。
暴威を諌め止めるための力が武力です。
武道の「道」が相手を倒すためではなく、人を守り導くための道だとしたら、宗教国家でない日本には一つの道標かもしれません。
と、一人思ってみたり。。。

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コメント

>加藤二三修さん
島根県、是非行きたいのです、出雲大社へ。
伊勢神宮に行った勢いですぐ行けばよかったのですが。
松江なども名産が多いので、食い道中もできそうですね^^
私の解説が足しになれれば幸いです。

インターハイ出場なんて、素晴らしい実力ですね!
先日、少林拳世界3位の少年が強盗逮捕したとか。
武道で清く正しい青年になられることをお祈りします。

私の子供は今高校生ですが小学生のとき剣道、少林寺拳法は6歳のときからしております。親ばかですが昨年インターハイにも出場いたしました。私は武道の経験がなく、少林拳との違いがとても分かりやすく理解できました。私は島根県ですが来訪県に島根が入っていませんでした。神々の国へどうぞお越しください。

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